Ep.1048 Rakuten AI 3.0騒動──“国産最大”LLMの正体とオープンソース時代の透明性(2026年3月26日配信)
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2026年3月17日、楽天グループは国内最大規模を謳う日本語対応の大規模言語モデル「Rakuten AI 3.0」を公開しました。しかし、華々しい発表の直後から、ITエンジニアや研究者の間ではちょっとした騒動が巻き起こりました。その発端は、公開されたAIの内部データです。技術者たちが設定ファイルを読み解いたところ、このモデルのベースが中国のDeepSeek社が開発した超高性能モデル「DeepSeek-V3」であることが明らかになったのです。
楽天は事前の公式発表において、「オープンソースコミュニティ上の最良なモデルを基に開発した」と表現し、自社が長年蓄積した高品質なデータを用いた日本語の追加学習による成果を強調していました。決して嘘をついていたわけではないのですが、ベースモデルの具体的な名称を積極的に明示していなかったため、「ゼロから開発された純粋な国産AIだと思っていた」というビジネス層などから、情報の透明性を欠いているのではないかという厳しい指摘がSNSを中心に相次ぐ事態となりました。さらに公開当初、ベースとなったDeepSeek-V3がルールとして要求するライセンスの著作権表記が一部抜け落ちており、コミュニティからの指摘を受けて後から慌ててクレジット表記を追加するという対応をとったことも、批判の火種となってしまいました。
一方で、こうした批判に対して冷静な見方をする専門家も少なくありません。技術的な観点から見れば、現在世界トップクラスの性能を誇るDeepSeek-V3をベースに採用し、それを日本語の文化やビジネス習慣に合わせて最適化したこと自体は、非常に合理的で高度なエンジニアリングの実績だと言えるからです。また、一部では「ベースが中国製だと、入力した機密データが中国に送られてしまうのではないか」といったセキュリティ上の懸念も囁かれましたが、これも誤解です。Rakuten AI 3.0はモデルの中身が公開されているオープンウェイト形式であり、楽天が国内の安全な自社データセンターに直接ダウンロードして動かしているため、利用者のデータが外部に流出するような技術的な経路は存在していません。
世界中の国や企業が、自国のルールや価値観に合った独自のAIインフラ構築を急ぐ中、今回の出来事は私たちに重要な問いを投げかけています。それは、海外の強力なオープンモデルを賢く活用しつつ、その出自や技術的な背景をいかに透明性をもって社会に説明するかという、AI開発における新たなコミュニケーションの課題です。「国産AI」という言葉の定義そのものが揺れ動く今、企業には優れた技術力だけでなく、ユーザーや社会との誠実な対話がこれまで以上に求められていると言えそうです。